【カーマガジン好評連載中】
大熊康夫のイラスト・ワールド
Oblique rays
斜光線が作り上げる表情
幼少の頃から、英国に夏は似合わないと思っていた。
実際に、現地へ足を運ぶまでは、英国には夏なんて存在しないとまで…。
だが、英国を訪れてみると四季があること、
夏はエアコンを必要とすることはまず無いが、
小さなラジエーターを搭載したミニの水温計の針が
稀にレッドゾーンに突入する程度の暑さであることにも気づかされた。
そして、秋冬と比べ春夏の日照時間には雲泥の差があるため、
アウトドア中心の行動パターンの旅行者にとっては、
春夏の方が満喫できる時間が圧倒的に長くなり、
大きなメリットを生んでくれる。
ところが、秋の英国を訪れてみると、
そんな貧乏くさいお得情報は一気に吹っ飛ばされるほどの
大きな魅力を伴ったどんでん返しを喰らわされた。
太陽の位置が低いことにより、
日本のそれにも引けをとらないほどに美しい紅葉で
彩られた景色は常に斜光線に照らされる。
その光は色彩を深め、さらには、影を長く伸ばし、
見えるものすべてがいにしえの表情となり、
幼少の頃からのイメージと重なった。
英国には快適な夏はあるが、ことさら秋が良い…。
■大熊康夫プロフィール
ビッグベアー代表。1960年生まれ。イラストレーターとして、旧き佳き英国車と
英国の風景を独自の作風で描き続ける傍ら、専門技術を習得し、英国スミス社の
ヴィンテージ・ウォッチの販売・メンテナンスなども行う。現在の愛車は1956年式の
モーリス・マイナーと1997年式のランドローバー・ディフェンダー110 |