1950年代初期にエルメスがスミス社へ依頼して製作した極めて珍しい腕時計です。このモデルは英国市場でのみ販売されたと言われており、その生産はケースをロレックスなどにも使用されている英国の名門デニソン社が、そして、そのほかの文字盤やムーブメントなどをスミス社が担っていました。ケースメーカーのデニソン社は戦後間もなくスミス社へケースを提供していたことから、スミス社がエルメス社より依頼され、デニソン社からケースを調達して組上げ、エルメス社へ納めていたと考えられています。デニソン社製のケースはクロームメッキの本体とステンレススチール製のベゼル及び裏蓋から構成される3ピース構造で、この時代の特徴である高さのあるアクリル製レンズが付属します。文字盤は1940年代から続く1215モデルに使われていたデザインと同じものでSMITHSのロゴをHERMESに差し替えられたシンプルなプリントと金メッキのドットが施されており、ブルースチールの3針と伴い極めて魅力的といえるでしょう。ムーブメントには1215のCタイプが搭載されており精度、信頼性ともに世界水準といえます。外径:31.1mm。また、このエルメスにはリテイラーであったJames Walkerのプレゼンテーション・ボックスが付属します。
コンディションは、ケースに通常の使用によるとても浅いキズが見られますが、ほとんど使用されていなかったニアミントといえる状態です。また、時計の顔とも言える文字盤については3針も含め、とても60年以上経過したとは思えない限りなく新品に近い状態で、過去に販売したエルメスの中では、最も状態の良い個体であるといえます。ムーブメントに関しましてははオーバーホールされたばかりで、破損していることの多いボルトスプリングはしっかりとしており、フルオリジナルの状態を保っています。新品に交換されたベルト以外はフルオリジナルです。付属のプレゼンテーション・ボックスも多少の使用感はあるものの、極めて良い状態を保っています。 |