1916年英国スミス社製銀無垢ボーゲル・ケース15石手巻腕時計
365日間動作保証付
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【 S.Smith & sonの腕時計とは 】

スミス社は、1890年代より、女性向けのブレスレット型時計として、腕に着ける時計を販売していたものの、男性用の腕時計は1910年以降の第一次世界大戦の需要に合わせて開発され実用化したトレンチ・ウォッチとしての製品が初と言えます。つまり、世界最初期の腕時計として生れ、生産し続けられたのがS.Smith & sonの腕時計と言えるわけです。一般に第二次世界大戦以降の軍用はミリタリー・ウォッチと呼びますが、それ以前はトレンチ・ウォッチと呼ばれていました。

【 このモデルについて 】

1916年、つまり、第一次世界大戦中に生産された、このトレンチ・ウォッチは、材質が銀無垢であることから軍用として使われていた訳ではなく、ごく限られた富裕層向けに、ロンドン、ストランドのスミス本店にて販売されたものと考えられます。

実際に軍用として使用されていたトレンチ・ウォッチは当時において頑強な材質であったニッケル製が多く使われていました。外径は35mmで、この数字は戦後のスミス社製ミリタリーと一致し、極めて興味深いところです。

【 銀無垢製ボーゲル・ケース 】

このモデルの銀無垢ケースは戦後の腕時計とは、その趣が全く異なります。懐中時計のような竜頭とその下に付属するプッシュ・ピン、そしてロー付けされたワイヤー形状のラグ、また、スクリュー式のベゼルなど、幾つもの1910年代の腕時計としての特徴を備えています。特に滑り止めの溝が付くベゼルは、ムーブメントを取り出す際にベゼルを回転させるためにあり、この極めて特徴的な形状のケースをボーゲル式と呼んでいます。

竜頭を引っ張り出した上で、ベゼルを回転させるとスクリュー式の開閉構造のベゼルが文字盤とムーブメントと共に外れる、極めてユニークな構造と言えます。

外径35mm     

  【 文字盤 】

文字盤の材質は戦前の懐中時計と同様で、純白の焼き物で出来ています。その表面には全て手書きによるアラビア数字やミニッツ・インデックス、そして、ロゴなどの文字が描かれています。さらにアラビア数字と長短針には夜光塗料がやはり手作業で施されています。

【 ロンジン社製の超高性能なムーブメントを搭載 】

戦前のS.Smith & sonの腕時計には、一部のクロノグラフを除き全てスイスの名門時計メーカー、ロンジン社製の15石超高性能ムーブメントが搭載されていました。製造後、100年以上も経過した腕時計ですが、精度は、戦後のスミス腕時計と変わらぬ精度を誇っていることには驚きです。  

【 使い込まれてはいるもののレンズとベルト以外はオリジナル 】

さすがに、使い込まれてはいるものの、レンズとベルト以外は全てオリジナルと言える驚愕のコンディションです。銀無垢のボーゲル・ケースには深いキズやヘコミなどはなく、銀特有の酸化によるクスミにより、均一で見事ないぶし銀となっています。ポリッシュにより新品同様の美しさを取り戻すことは出来ますが、全体のバランスを考え、現状は磨いていない状態です。

また、文字盤に、は8時から11時にかけて極めて微細なクラックがありますが、英国では、これをヘアラインと呼び珍重しています。また、アラビア数字や短針の夜光塗料の脱落も見られますが、極めて雰囲気の良いオリジナル・コンディションを保っています。

ムーブメントは、この年式としては、極めて美しい状態を保ち、また、フルオリジナルの良好なコンディションと言えます。また、ビッグベアーによる完璧なオーバーホールが行われていますので当時の精度を期待できます。しかしながら、全てが100年以上経過した部品で構成されているのは事実ですので、毎日の実用的な時計としてお使いいただくのではなく、休日などの特別な日に使用頻度を少なく、消耗を最小限にお使いいただくことをお勧めいたします。


















「美しいヘア・ラインと全てが手書きの文字盤」
 
戦前の懐中時計や腕時計の多くは、純白の焼き物で、この腕時計も例外ではありません。そのため衝撃を受けると表面にクラックが入りやすい性質を持っています。

この文字盤に現れているような微細な「ひび」を英国人はヘア・ラインと言って珍重します。無ければ、衝撃を受けてない証であり、コンディションとしては優れている訳ですが、微かなヘア・ラインは、樹木にとっての年輪のように捉えて楽しむのは、とても英国人らしいと言えます。

また、文字盤の数字や細かなインデックスのライン、そして、夜光塗料に至るまで、全てが手書きであることも戦前の特徴と言え、工芸品としての評価を得ている理由なのです。
 

 
 
「ユニークな設計の銀無垢ボーゲル・ケース」
 
この腕時計に採用されているケースは、ボーゲル式と呼ばれている特殊な構造を持つことで、独特で魅力的な外観の印象を作りあげています。

1910年代、つまり、世に腕時計が生れた時代に多く見られる、このボーゲル・ケースは、本体と裏蓋が一体化しており、ベゼルに取り付けられた文字盤を含むムーブメントをねじ込むことにより取り付けるという極めてユニークなケースであると言えます。


 
「1916年に生産された証が刻まれている」
 
ケース本体の内部には、ホールマークが刻まれていますが、この時代のスミスは、そのほとんどをスイスのロンジン社で生産されていたため、英国に入国した年のインポート・ホールマークが刻印されています。

ホールマークの組み合わせにより1916年に入国していることがわかります。入国年と製造年は、ほぼ同一であることから、英国のアンティーク業界では、これを製造年式としています。
 
 
 
「懐中時計の名残である竜頭周りのデザイン」
 
戦前の懐中時計からの発展型である腕時計の初期デザインは、当時のピン・セット式の竜頭周りのデザインが、そのまま腕時計にも採用されています。

時刻設定を行う際に、竜頭を回す時、脇にあるピンを爪で押し込みながら行います。この方式は、戦前の懐中時計の名残で、戦後とは大きく異なるデザインに風情を感じ、1910年代に思いを馳せることが出来ます。
 
「ロンジン社製の超高品質ムーブメントを搭載」
 
この時代のスミスには、ロンジン社製の超高品質ムーブメントが多く搭載され取り、このモデルも例外ではありません。そのため、精度に関しては、戦後のスミスと大差はなく1916年としては驚異的な性能を発揮します。

緩急針のインジケーターに記されたイニシャルは戦後のスミスとは少々異なり、A FとR Sであることが分かります。AはADVANCEの、FはFASTの頭文字であり共に「進み」を示しています。また、RはRETARDの、SはSLOWの頭文字で共に「遅れ」を示しています。
 
 
 
「特殊なベルトを必要とするラグ構造」
 
戦前の腕時計のラグは、その成り立ちからも理解できるように、ケースにワイヤーをロー付けしたデザインが多く見られます。

そのため、ベルト自体の構造も大きく異なり写真のオープン・エンドや、一本モノの長ベルトをそれぞれのラグに通す方法となります。

この製品には当時モノの、雰囲気あるユーズド、そして、新品が付属いたします。