■ デュオトーン文字盤モデルとは ■
 

スミス史上初の英国製ムーブメントを搭載した腕時計、
1215(トゥエルブ・フィフティーン)の問題点を払拭するために、1952年に生れたのがデラックス。
そして、発売年にリリースされたのが、今回の特集で取り上げたデュオトーン文字盤モデル。

その名の通り文字盤は素材の異なる2色に分かれており、光の受け方で、
その濃淡が反転するという凝ったデザインが施されている。
1952年の発売以来1961年前後まで、約10年間も生産が続き、
ベストセラーとなった人気モデルであったと言える。

そのため、デュオトーンの中にも、様々なバリエーションが次々と生まれ、
ケースの材質やサイズ、文字盤のデザイン、ムーブメントの種類などの違いで、
少なくとも8種類以上のモデルが存在していると言われている。



 
  1950年代スミス・デラックス
金メッキ17石手巻腕時計 3年間保証付
外径:33.1mm 税込価格:¥99,900 

金メッキ・スクリューバックケースのセンターセコンド・モデル。現代の時計のスタンダードと同様に、文字盤の中心に秒針がある。当時としては、ムーブメントも複雑となり、いわば進化系と言える。6時の位置に秒針の文字盤がない分、スミスのロゴ・マークの主張が強いモデルだ。秒針のレッド・アローが魅惑的。
  1952年スミス・デラックス
9金無垢15石手巻腕時計 3年間保証付
外径: 31.8mm SOLD

デラックスの登場は1952年であり、この個体は何1952年製造のレア・アイテムだ。蕩けるような滑らかな曲線と9金無垢の質感が大きな魅力。戦前からの伝統を守ったスモールセコンド文字盤は、発売当時もトラディショナルなデザインであった。金無垢ケースは裏蓋の内側にホールマークの刻印があり、年式が分かる。
  1950年代スミス・デラックス
金メッキ15石手巻腕時計 3年間保証付
外径:32mm 税込価格:¥599,000

発売当時のプライス・タグの他、オリジナルのボックス、ベルト、そして、ブランクの保証書と、全ての付属品が揃った新品未使用のデッドストックである。スミス・デラックスの本来の姿を知れるという意味で、極めて価値のあるアイテムである。この完璧なセットは最上級のスミス・デラックスと言えるだろう。
           
 




〜 ケース材質の違いを探る 〜
 
ケースの材質は、ニッケル無垢、クロームメッキ、金メッキ、9金無垢、18金無垢など
少なくとも5種類以上があり、クロームメッキや金メッキ・ケースには、スクリューバックの防水ケースもあった。
よく見ると各ケースの印象は、大きく異なる。

 
 
 
 
 
1954年頃にリリースされた金メッキ防水機能付きで、ヒラリー卿によりスミスがエベレスト初登頂を果たしたことを記念して、防水ケースのデラックスには、サブ・ネーミングに「エベレスト」の名がが与えられている。生活防水レベルではあるがSS製スクリュー式の裏蓋と二重構造の竜頭及びパッキンが備わっていた。
  1952年製造のBWC社製9金無垢ケースは、ベゼル、本体、そして裏蓋の3ピース構造で構成されており、曲面を巧みに生かした重厚感のある造形が秀逸である。また、エッジ部分などの細部までもが、極めて繊細な曲面で形づくられており、9金無垢素材の滑らかで柔らかな質感と共に、上質な装着感も魅力である。   1954年のスミス社製カタログに掲載された2ピース構造で、本体は金メッキ、そして、裏蓋はムーブメントを包み込むような形状のSS製を採用している。他の2モデルと比べると面を活かした造形と言え、曲線的なデザインの中に直線を活かした部分も見られ、メリハリの効いた個性的な美しさを感じられるデザインだ。  




〜 文字盤のデザインに注目 〜
 
このモデルのニックネームの「デュオトーン・ダイアル」の由来である文字盤のデザインは文字通り、
素材の異なる2色に分かれており、光の受け方で、その濃淡が反転するという凝ったデザインが施されている。
秒針はセンターとスモセコのバリエーションがある。

 
 
 
 
 
センターセコンドと呼ばれる、現代の時計と同じように、秒針が文字盤の中央にあるデザイン。そのため全体にスッキリとしたシンプルな盤面が特徴。さらに、スミスの多くのモデルが採用している秒針先端のレッドアローが差し色となっている。レッドアローはキャンディー塗装でルビーのような落ち着いた輝きだ。
  スモールセコンドと呼ばれる、秒針の文字盤が6時の位置に一段掘り下げられている。戦前からの伝統を踏襲し6の文字の上から加工しているため、文字の下部が残ったデザインとなっている。印象はよりトラディショナルだ。デュオトーンの濃淡は、光の受け方により内側及びスモールセコンド文字盤が濃くなっている。   スモールセコンドと呼ばれる、秒針の文字盤が6時の位置に一段掘り下げられている。左のモデルとは異なりあらかじめスモールセコンドように6の文字がないところが特徴で、スッキリとした印象だ。好みによって賛否両論だが、興味深いデザインの違いだ。デュオトーンの濃淡は、光の受け方により外側が濃くなっている。  




〜 ムーブメントの違いは文字盤の差 〜
 
このモデルのニックネームの「デュオトーン・ダイアル」の由来である文字盤のデザインは文字通り、
素材の異なる2色に分かれており、光の受け方で、その濃淡が反転するという凝ったデザインが施されている。
秒針はセンターとスモセコのバリエーションがある。

     
  石の数が多いほど高性能という印象があるが、実は、センターセコンドの17石ムーブメントは、スモールセコンドの15石をベースに秒針を中心に移動するためにギアを増やしていることで2石多く必要になっており、性能の優劣はない。17石ムーブメントは、文字盤とは裏腹に複雑な印象があり魅力となる場合もあるだろう。   写真の15石ムーブメントは、1952年(3257B)の物。デッドストックは、裏蓋を開けてしまうと、ユーズドとなってしまうので、ご覧いただけないが、同じ15石が搭載されている。ムーブメントを最もベーシックな設計で造ると、この15石のデザインとなり、秒針は6時の位置となる。文字盤のデザインとは裏腹にシンプルだ。